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神野美伽 エッセイ集

ファンクラブ会報誌などで綴ったエッセイを、少しずつですが、神野美伽ブログでご紹介しています。http://ameblo.jp/mika-shinno/
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 生まれたら、死ぬ。
 人も鳥も犬も猫も、花も魚もバッタもカエルもみんな死ぬ。
 しかし、今さらながらそれがどれほど切ないことか、思い知る。

 一滴、一滴、インクをたらすような悲しみが心の中を染めていく。
 ポタリ、ポタリ、じわり、じわり。遅くもなければ、速くもない、とてもいやなテンポで心を濡らしていく。
 私の心の隅から隅までがベッタリ紺色に染まったら、あきらめを許しいれることが出来るのだろうか。

 いや、あきらめない。
 あきらめられない。
 あきらめたくない。

 私の腕の中の小さな命を、終わらせたりなどするものか。

 心臓が弱り、白血病にもおかされたこの猫の命は、現在、毎日三本の注射と強心剤と血管拡張剤など何種類もの薬の組合せで綱渡りしながら繋げている。
 もうすでに点滴も出来なくなった今、私は迷うことなく残された次の手段を選んだ。

 「輸血をします。」
 「すぐ、お願いします。病院に血液はあるのですか。」
 「いいえ、ありません。」
 「では、どうすれば…。」
 「うちの猫の血を輸血します。型が合えばいいのですが…。」
 猫の場合、98%がA型で残り1%ずつがB型とAB型だそうだ。
 確か、そんなことを先生と話した気がする。

 輸血のための血液型判別検査を受けて型が判定したら、すぐに病院の二階から一匹の猫が下ろされて来た。
 人間のように輸血用血液のストックがない犬や猫のために、動物病院では必ず血液提供が可能な犬猫を、言わば<輸血用>として飼っていると、その時初めて知った。
 それはそれで、ショックだった。
 当然、若くて健康なその猫たちにもそれぞれ名前がつけられていて、私の猫は<たわし>という猫からその血をもらった。
 心から「ありがとう。」と思った。と同時に、とても心が痛んだ。
 私の猫の命のために、別の猫の血液を移す行為を<医療>という観念でとらえていいものなのか。
 人間は、人間以外の動物に対して、その<命>に対して、ここまで支配をして」いいものなのか。
 もはや、私の猫の命は猫のものではなく私の手の中、私の頭の中にある。
 私は、自分のしていることが恐ろしくなった。
 本来、終わる命を、終わっているやも知れぬ命を、終わるべき命を、愛情という名の傲りのもとに支配する。
 恐ろしい――――。

 それでも私は、明日も私は、私の猫に薬を与え、注射を打たせ、いやがる口から食べ物と水を流し込み、生きてくれと祈るのである。

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